診断・方針説明

診断・方針説明（Bad Newsを伝えるときの推奨対応）

推奨される対応

患者さんに望ましくない情報（悪い知らせ）を伝えるときは、 ①落ち着いた環境を整える（Supportive）、 ②正直かつわかりやすく伝える（How）、 ③今後に必要な情報を一緒に整理する（Additional）、 ④気持ちを受け止めながら安心を支える（Reassurance & Emotional support） の４点を優先します（＝SHAREモデル）。

• 環境：プライバシー・十分な時間・家族同席の配慮
• 伝え方：正直・簡潔・丁寧、質問を促し、言葉選びは慎重に
• 情報：治療方針、生活への影響、相談先や支援サービス
• 安心：気持ちの受容と共感、希望の維持、「一緒に考える」姿勢

SHAREチェックリスト

Supportive environment（支持的な環境）

• 静かでプライバシーの保たれた場所を選ぶ／十分な時間を確保する
• 家族同席の希望を確認する／中断されないよう配慮する

How to deliver the bad news（伝え方）

• 正直・わかりやすく・丁寧に。専門用語は避け、要点→理由→次の一歩で説明
• 「がん」という語の反復は控える／患者さんの理解をその場で確認する
• 質問を促し、出てきた質問に正面から答える

Additional information（付加的な情報）

• 今後の治療方針、日常生活への影響、支援制度・相談窓口を共有する
• セカンドオピニオンやACPの検討など、患者さんの希望に沿って提案する

Reassurance & Emotional support（安心感と情緒的サポート）

• 気持ちを言語化して受け止める（例：「驚かれますよね」）
• 共感を言葉で示し、希望を維持する（例：「一緒に取り組みましょう」）

研究の概要（エビデンス）

• がん患者42名およびがん専門医7名を対象に面接調査を行った結果、がん告知時のコミュニケーションに関して、患者は「場の設定」「伝える内容」「伝え方」「情緒的サポート」の4つを重視していることが分かりました。
  Fujimori M, Akechi T, Morita T, Inagaki M, Akizuki N, Nakano T, Yamawaki S, Uchitomi Y.Disclosing the cancer diagnosis to Japanese patients with cancer: A comparison of physician and patient opinions.Psychooncology. 2005; 14(12): 1043-1051. doi:10.1002/pon.918
  
  
• がん患者529名を対象に、悪い知らせの際に望まれる 医師のコミュニケーションを調査した結果、SHARE（Supportive / How / Additional / Reassurance） の4要素が抽出されました。年齢・性別・教育年数などで嗜好の差はみられるものの、いずれも関連は弱く、 個別性への配慮が重要であることが示されています。
  Fujimori M, Akechi T, Morita T, Inagaki M, Akizuki N, Ogawa A, Sakano Y, Uchitomi Y. Preferences of cancer patients regarding the disclosure of bad news. Psychooncology. 2007; 16(6):573-581.

SHAREの要素と患者の希望

現場で使える会話テンプレート

• 前置き：「少し難しい話になります。正直にお伝えしてもよろしいですか？」
• 伝達：「今わかっていることを、できるだけわかりやすくご説明します。」
• 確認：「ここまでで不明な点や、気になることはありますか？」
• 情報提供：「今後の方針や日常生活のこと、利用できる支援についても一緒に整理しましょう。」
• 安心：「ご不安は当然です。私たちは引き続き伴走します。一緒に考えていきましょう。」

まとめと次の行動

患者さんの理解と尊厳を守るため、SHAREの4要素を土台に、個別の希望や価値観を丁寧に確認してください。 必要に応じて家族・多職種・相談窓口と連携し、継続的な支援につなげます。